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甲府地方裁判所 昭和42年(ワ)100号 判決

原告 島田明

被告 財団法人花園病院

主文

1  原告が被告の経営する花園病院の従業員としての身分を有することを確認する。

2  被告は原告に対し、金八六万六五七〇円及びこれに対する昭和四二年四月二九日から完済に至るまで年五分の割合による金員、並びに昭和四二年二月以降毎月二八日かぎり月額金二万九五〇〇円の各支払いをせよ。

3  原告のその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

5  この判決は右第2項に限り、仮に執行することができる。ただし被告が金五〇万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

第一当事者の申立

一  原告

1  主文第1項と同旨。

2  被告は、原告に対し、金八七万四七九二円及びこれに対する昭和四二年四月二九日から完済に至るまで年六分の割合による金員、並びに昭和四二年二月以降毎月二八日限り月額金二万九八四七円の各支払をせよ。

3  主文第4項、第5項本文と同旨。

二  被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決、並びに被告敗訴の場合、担保付仮執行免脱宣言。

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  被告はその肩書住所において精神病院(以下本件病院という。)を経営し、原告は被告に雇傭され第三病棟主任看護人として勤務していたものである。

(二)  被告は昭和三九年一一月二六日原告に対し、就業規則五一条一号、五号に該当する事由があつたとして、懲戒解雇の意思表示(以下本件懲戒解雇という。)をした。

(三)  しかしながら原告には右規定に該当する事実はないから、右意思表示は無効である。

仮にそうでないとしても本件懲戒解雇は、原告が本件病院の従業員より成る花園病院労働組合(以下本件組合という)結成の中核となりその後も執行委員長として組合の活動を推進していることを嫌悪して、これを病院から排除するためになされたものであり、明らかな不当労働行為であるから無効といわなければならない。

1 本件組合は昭和三九年七月一一日、山梨県内の民間病院としては初の労働組合として、本件病院従業員三九名により結成されたが、原告は右結成準備段階から中心的役割を果すとともに、結成と同時に執行委員長に選任された。

2 右結成前本件病院では、県内の他の病院と同様に賃金・一時金が東京都内の精神病院に比し相当低額であり、かつ看護人が、病院理事の病気の付添や理事の失踪した家族の捜索等に動員されるなどの事実に象徴されるような、きわめて前近代的な労使関係が温存されていた。組合の結成がこうした労使関係の打破を動機の一つとしていたことは当然であるが、それ故にこそ組合は結成直後から病院側の激しい敵視・反発をうけたのである(このことは事務長、看護長ら病院幹部の徹底した個別的脱退工作により、結成後わずか三週間を経過した同月の末ころまでに実に半数の組合員が脱退を余儀なくされた事実に端的に示されている)。

3 のみならず病院は組合結成後間もなく、非組合員を入会資格とし、病院長諮問機関幹部会(後に参与会と改称)の代表者であつた中沢敦子医師を副会長とする互助会を結成させ、これを組合に対抗させる挙に出た。

右中沢医師は病院と組合の団体交渉に、病院側交渉委員として出席している事実からも明らかなように、みぎ互助会がいわゆる御用組合であることは疑の余地がない。

4 ところで組合は結成後、病院に対し精勤手当廃止と物価手当の支給、調理職員の本採用、看護婦の補充等の諸要求を提出し団体交渉を求めたが、後述する本件配置転換発表に至るまでに開かれた団体交渉は僅か三回に止まり、しかもはじめの二回は病院長は出席しないという有様で、こうした病院の組合無視または不誠実により、右交渉は実質的には殆ど進展を見なかつた。

一方病院は互助会とも団体交渉をもち、同年八月初め互助会から従業員の配置転換の要望が出されると、直ちにこれを諒承する旨の回答をし、翌九月一九日開かれた病院の最高機関である理事会に、互助会の会長である横谷忠彦らを出席させて右配置転換について意見を述べさせる等、明らかに本件組合とは差別的な扱いをしているのである。

5 組合は同年一一月一四日病院に対し、年末一時金として基本給の三ケ月分の支給を要求し、同月二一日までにその回答を求めた。これに対し病院は前記配置転換の実施を急ぎ、同月二〇日「別表(一)の配置転換(以下本件配置転換という)を同月二四日から実施する」旨を発表した。この発表直前、かねて同月二一日に予定されていた前記一時金に係る団体交渉が、病院からの申出により延期されていることを併せ考えるならば、本件配置転換の発表は組合を混乱させ、高額の一時金要求を棚上げにしようと図つてなされたものと認めざるをえないのである。

6 精神病院の看護人の配置転換は単に勤務場所の変更にとどまらず、その業務の特殊性から、当然に業務内容をも変更をせざるをえないのである。すなわち精神障害者という特殊な患者の治療の介助や看護を全うするためには、看護人は患者の病因、病状、性格等に精通しなければならないが(このことは職務遂行中患者からの不測の加害行為に対処するためにも絶対必要なことである)、配置転換があると新たに多数の患者の病因等を把握し直さなければならず、それまでの間は不測の事故の危険も大きい。

従つて看護人の配置転換は労働契約の内容の変更というべく、対象者の同意を要するものと解すべきところ、かかる同意を欠く本件配置転換は無効といわなければならない。

7 しかも本件配置転換は組合員に関する限り、以下に述べるとおり不当労働行為であるから無効である。すなわち、

(1) 本件配置転換は前記2、3の激しい組合破壊工作を背景として、御用団体である互助会からの要望を直接の契機としてなされたものであり、また配置転換が強行された時期について前記5の事情がある。

(2) 原告に対する配置換えは明白な格下げであり、しかも不慣れで遂行困難な職務を強いるものであつて、原告の組合活動に対する報復的ないやがらせである。

(3) 原告の妻島田愛子については、女子病棟から男子病棟(軽症患者を収容しているが、それ故に比較的自由な生活をしているので、看護人の身体の安全に危険が生じ易く、過去にそのような事故が起きた例もある。しかも同病棟は階段が多く妊娠七ケ月の身重であつた同女には危険である。)への配置換えであり、また川崎松枝と末木房子の配置交替は僅か六ケ月前に全く逆の交替をさせられているので、いずれもいたずらに負担増大を来すものである。なお斉藤道夫と斉藤隅子の夫婦が同一病棟に勤務することは、夜勤により家庭においてすれ違いを余儀なくされる可能性が大きい。

8 組合は配置転換の発表された二〇日の夜と翌二一日昼休みの二回にわたり協議した結果「本件配置転換に反対する。病院に対しこの問題について同月二三日に団体交渉を開くことを求める。右団体交渉が開かれない場合または交渉が妥結しない場合には、旧勤務体制を維持する」旨の決議をなし、二一日病院に対して右決議内容を記載した団体交渉申入書を提出した。

病院は一応右申入に応ずる旨の態度であつたが、右申入書に組合側交渉委員として山梨県労働組合総連合会(以下県労連と略称する。)のオルグ二名が加えられている点に難色を示し、これについて二一日夜と二二日午後(二回)に予備折衝が持たれたが、右オルグ参加の点については合意に至らなかつた。そして二三日午後三時ころ、病院の渡辺晏行事務長は原告に対し「人事権は病院にあり本件配置転換は団体交渉の対象とならないから団体交渉を開かない」旨通告した。

しかし原告ら組合側交渉委員(県労連の今福オルグを含む。)は当初団体交渉を開くと予定された同日午後五時病院に赴いて事務長に面会を求め、重ねて団体交渉を開くよう要求したが、同人は前と同様の言辞をくりかえしてこれを拒否した。

以上のとおり病院は、正当な理由なく団体交渉を拒否したのであつて、これが労働組合法七条二号の不当労働行為を構成することは明らかである。

9 かくして組合はやむを得ず前記決議どおり翌二四日午前九時以降、本件配置転換を拒否し旧勤務体制に従つて就労する行動(以下これを本件拒否行動という)をとるに至つた。

本件拒否行動の目的は、無効ないしはきわめて不当な本件配置転換の根拠を糺し、これを改めることを求める組合の団体交渉権を実質的に確保することにあつたので、従つて争議行為としての正当な目的に該ることは多言を要しない。

そして組合が本件拒否行動の態様を採つたのは、ストライキ即ち一斉不就労の手段に訴えるならば病院業務の混乱が著しくなり患者に悪影響を及ぼす結果となることが十分に予想されたので、旧勤務に就き労務を提供することによつて、病院業務の阻害を最少限に押えながら病院の反省を迫り団体交渉を開かせることを目的としたものであつて、本件紛争においては最も穏当な方法というべきであり、争議方法としての相当性を充分備えるものである。なお病院は労働関係調整法(以下労調法と略称する。)八条一項四号の医療事業を行うものに該当するので、本件拒否行動についても同法三七条一項所定の予告義務があるかの如くであるが、本件配置転換は前述のように無効であり、従つて組合員らは依然有効な従前の勤務体制に就いているので、本件拒否行動は同法七条の「業務の正常な運営を阻害するもの」には該らないから、右予告義務は生じないというべきである。仮りにそうでないとしても、公益事業の争議予告制度は公益事業を利用する国民が突然の争議行為によつて不測の損害をうけることを防止することを目的とするものであつて、使用者の利益を保護することを主眼とするものではないから、たとえこれに違反したとしても労調法所定の制裁をうけることはともかく、労使の対抗関係において争議行為の正当性を左右すべき要素とはならないと解すべきである。従つて、右予告義務違反を理由として本件拒否行動は正当性がないとすることは失当である。ちなみに本件紛争について救済申立をうけた山梨県地方労働委員会(以下地労委と略称する。)はこれを調査した結果、右違反は軽微なものにとどまるとして同法所定の制裁手続をとらないことを決定しているのである。

10 本件拒否行動に対し、病院側は一一月二四日午後から組合員に対して個別的に新勤務就労を説得することに奔走したが、本件配置転換に関する団体交渉については依然として拒否し続けたばかりか、右個別的説得にみられるとおり、本件拒否行動が組合の団体行動であるとも否認し、組合を一切無視する態度をとつた(かねてから予定されていた年末一時金要求に関する団体交渉が同日開かれこの席においても、組合から本件配置転換に関する団体交渉を開くよう申入がなされたにも拘らず、病院は議題外であるとして話合いすら拒否し、本件拒否行動についても何らの発言もしなかつた)。

11 組合は翌二五日地労委に対し、病院の団体交渉拒否は不当労働行為であるとして救済申立をした。ところが地労委は本件拒否行動につき、労調法三七条違反の疑いがあるとの見解を抱き、これが同委労働者委員を通じて組合に伝えられたため、組合では一応右見解を尊重し、地労委が右申立に対し速かに救済を命じてくれることを期待して「本件拒否行動を中止して新勤務につくこと、及び今後の病院の態度如何では一二月一〇日以降ストライキを行うこと」を決定し、一一月二六日午後一時すぎ病院に対して文書でその旨を通告した。

ところが右ストライキ通告に驚いた病院は、急拠同日午後三時すぎ、原告に対する本件懲戒解雇を含む別表(二)のとおりの懲戒処分をしたものである。

12 本件懲戒解雇は、本件拒否行動が違法な争議行為であるとの前提の下に、就業規則五一条一号、五号を適用してなされたことが明らかであるが、既に詳論したとおり本件拒否行動は全く正当な争議行為であるから、右条項を適用することは許されず本件懲戒解雇は無効である。

仮に本件拒否行動が正当でないとしても、前記1ないし11の事情に照らせば、本件懲戒解雇が労働組合法七条一号の不当労働行為に該当することは明らかであり、したがつて無効というべきである。

(四)  以上の点から原告は、昭和三九年一一月二六日以降も被告の経営する病院の従業員であり、賃金請求権を有する。

1 病院の賃金は毎月二五日締め、二八日払いである。

2 原告が本件で請求する賃金の根拠は次のとおりである。

(1) 原告の解雇直前の賃金構成。

○固定部分合計 一万九三〇〇円

基本給     一万八〇〇〇円

職務給     一一〇〇円

通勤手当    二〇〇円

○非固定部分

休日出勤手当、宿直手当、深夜手当、超勤手当等

(2) 原告は賃金として昭和三九年八月二万三七九二円、九月二万四四〇九円、一〇月二万四八四〇円の支給をうけ、その平均は一ケ月二万四三四七円であり、非固定部分の平均は一ケ月五〇四七円となる。

(3) 昭和四〇年四月分以降、基本給につき賃金規定により定時昇給六〇〇円、組合との協定に基づき組合員一律に臨時昇給二一〇〇円、合計二七〇〇円の昇給がなされたから、原告の同月分以降の基本給は二万〇七〇〇円である。

(4) 昭和四一年四月分以降も、右同様に定時昇給六〇〇円、臨時昇給一一〇〇円、合計一七〇〇円が昇給され、原告の同月分以降の基本給は二万二四〇〇円である。

(5) 昭和四〇年四月分以降の職務給は、賃金規程の改訂により一ケ月二〇〇〇円となつた。

(6) 右同様通勤手当は一ケ月四〇〇円となつた。

3 右2の各諸元によれば、原告に支給されるべき賃金額は次のとおりである。

(1) 昭和三九年一二月分から翌四〇年三月分までの賃金。

昭和三九年八月分ないし一〇月分の平均額二万四三四七円の四ケ月分合計 九万七三八八円

(2) 昭和四〇年四月分から翌四一年三月分までの賃金。

一ケ月の固定部分は20,700+2,000+400=23,100(円)となり、同非固定部分は、基本給昇給により昭和三九年八月分ないし一〇月分の平均を下ることはないからこれを合計すると、(23,100+5,047)×12=337,764(円)となる。

(3) 昭和四一年四月分から昭和四二年一月分までの賃金。

一ケ月の固定部分は、22,400+2,000+400=24,800(円)となり、非固定部分は前同様と考えるべきであるから、合計(24,800+5,047)×10=298,470(円)となる。

4 なお原告に対しては次の一時金が支給されるべきである。

(1) 昭和三九年一二月

基本給の二・二ケ月分 三万九六〇〇円

(2) 昭和四〇年七月

基本給の一・二ケ月分 二万四八四〇円

(3) 昭和四〇年一二月

基本給の二・三ケ月分 四万七六一〇円

(4) 昭和四一年七月

基本給の一・三ケ月分 二万九一二〇円

(五)  よつて原告は、被告の経営する病院の従業員としての身分を有することの確認、並びに未払賃金合計金八七万四七九二円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四二年四月二九日から年六分の割合による遅延損害金、同年二月分以降毎月二八日に支払われるべき月額二万九八四七円の賃金の各支払を求める。

二  請求原因事実に対する被告の認否

(一)  請求原因(一)、(二)の事実は認める。

(二)  同(三)冒頭の「本件懲戒解雇は無効である」との主張は争う。同項1ないし11の事実のうち、病院従業員により組合が結成されたこと、組合から昭和三九年一一月一四日年末一時金支給の要求があつたこと、これに関する団体交渉の日が予定されていたがこれが延期されたこと、同月二〇日被告が本件配置転換を命じたこと、組合が同月二一日病院に対し本件配置転換につき同月二三日団体交渉を開くよう申入れ、原告主張の記載のある申入書を提出したこと、しかし右団体交渉は結局開かれることなく同月二四日から本件闘争が行われたこと、同月二六日午後二時ころ組合が病院に対し「同日午後五時から新勤務に就くこと、及び一二月一〇日以降ストライキに入ること」を通告したこと、被告が別紙(二)の懲戒処分を行つたことは認めるが、その余の事実は不知または否認。

(三)  請求原因(四)のうち、2の(1)、(2)(但し、八月、九月の原告が支給をうけた額のみ)、(3)、(4)、(5)、3の(2)(但し、基本給と職務手当のみ)、4の(1)及び(3)(但し、いずれも二ケ月分の限度において)、(2)及び(4)(但し、いずれも一ケ月分の限度において)の事実は認め、2のその余の事実は否認し、1、3、4、のその余の主張は争う。

三  被告の主張

(一)  本件懲戒解雇は、病院業務上必要かつ全く正当な本件配置転換命令に対し、原告が一部組合員を指導して組合活動の名の下に、違法な争議行為である本件拒否行動を行わせ、病院業務を混乱に陥れ患者に悪影響を与えるなど職場の秩序を乱し、組合員以外の従業員に対しても威圧的態度で休業、怠業を教唆、煽動する等、その情状が特に重い行為をしたことに対し、就業規則五一条号、五号、五〇条一号、四号、四九条六号を適用してなされたものであり、正当かつ有効な懲戒解雇というべきである。以下、右解雇理由について詳述する。

(二)  (本件配置転換の必要性、正当性について)

1 精神病院における治療方法の一として用いられる作業療法は、回復期にある患者を正常な社会生活に復帰させる前段階の仕上げをする等の、広い応用範囲をもつ重要な治療方法であつて、患者の精神の荒廃を防ぎ、幻覚、妄想等の病的体験から離脱させ、健康を増進させる等の効用を有するものである。ところで被告は本件病院を設置するにあたつて、右作業療法による社会復帰を理念として環境、敷地面積等も右療法に適するように選択し、敷地総面積の約三分の一を作業場施設に充てる他、設置当初から医師の指揮の下に作業療法の企画や患者の指導に専任すべき作業主任を置き、また看護人の啓発教育を図るため作業療法懇談会なる研究会を設ける等、作業療法を効率的に行うべく留意してきた。その後厚生省が昭和三六年度の治療方針に作業療法を重要項目としてとりあげるに至り、後の作業療法士法の成立(昭和四〇年)や医療費面での作業療法点数化等の動きにもみられるとおり、次第に作業療法は全国的に重要視されるようになつたため、被告においても作業主任に企画性、指導性に富んだ従業員を充て、右作業療法の整備強化を一層図る必要性に迫られた。

2 ところで本件配置転換前、本件病院の収容施設の状況は次のとおりであつた。

(1) 第一病棟

収容患者約六〇名、そのうち男子患者は新入患者、合併症患者、作業療法に不向きの重症患者から成り、女子患者は作業療法に向いている軽症患者であつた。

(2) 第二病棟

女子患者約五五名を収容。新入患者、合併症患者、作業療法に不向きの患者から成る。

(3) 第三病棟

二階建てで約四二名の男子患者を収容。いずれも作業療法に向いている患者であつた。

また看護人は別表(三)のとおりの状況で、各病棟に病棟主任が置かれていた。

3 昭和三九年五月以降、看護人の業務担当状況について次のような配置換えの必要が生じた。

(1) 第二病棟主任の正看護婦志村梅子及び同病棟准看護婦秋山和子が退職を申出、近く二名の欠員が生ずること、第三病棟准看護婦山本美恵子が同年六月中に退職して一名の欠員が生じたこと。

(2) 第一病棟正看護婦窪田きく江が病気のため長期欠勤が続き、また第三病棟准看護婦島田愛子が妊娠のため休みがちであり、右(1)の欠員と併せると病棟間の看護能力に不均衡が生じたこと。

(3) 以上の欠員、欠勤を含め同年七月ころから看護人の遅刻欠勤が多くなり、看護業務に乱れが生じたうえ、一部の組合員と非組合員との間に感情的な対立が生じ、精神病院においてとりわけ必要な看護人相互の親密な人間関係がそこなわれる虞れがあつたので、執務体制をひきしめ気分を一新する対策が必要となつたこと。

(4) 従来病院では外部から薬剤士を招き、外来主任の正看護婦平賀よ志子にこれを補助させて調薬事務を行つてきたが、昭和三九年一〇月一日付で専任の薬剤士を採用することに内定したので、患者のきわめて少い外来に右平賀を勤めさせる必要が乏しくなり、同人の能力からして病棟主任に転任させることが合理的と考えられたこと。

4 そこで病院は同年八月末、中沢医師と佐藤看護婦長に対し配置転換の立案を命じ、同年一一月一七日ころ漸く成案を得て直ちに参与会に諮問し、同月一八日に同会からの意見具申があつたので、院長決済のうえ同月二〇日、別表(一)のとおりの本件配置転換を決定し、同日右配置転換及びこれに伴う勤務時間の変更を同月二四日午前九時から実施する旨の命令を発した。

5 右配置換えの対象者毎の個別的理由はつぎのとおりである。

(1) 旧第三病棟主任であつた原告は能力、勤務実績とも優れているから、病院が整備強化を図ろうとする作業療法の主任者として最適任である(旧作業主任大久保鶴雄は、第三病棟主任の後任に充てるのが適当である)。

(2) 第二病棟の正看護人川崎松枝は能力、経験に富んでいるから、男子の重症患者を扱う第一病棟への配置換えを適当とする。

(3) 第二病棟の准看護人島田愛子は妊娠のため看護能力が減退しているので、配置転換によつてこれを補強する必要があり、かつ同人を準夜勤(午後五時から翌日午前一時まで)及び深夜勤(午前一時から午前九時まで)の服務がある第二病棟にそのまま勤務させることは母体保護の見地からみて不適当である(同人の新配置先たる第三病棟は二階建建物であるが、同僚の協力を得て階段の昇降を最小限に止めることが期待できる)。

(4) 第一病棟の正看護人窪田きく江は、病気のため欠勤が多く能率が極度に低下し、第一病棟の勤務は不適当となつたので第二病棟に配置換し、そのあとに能力の高い第二病棟の准看護人斎藤隅子を充てるのが相当である。

(5) 第三病棟の准看護人斎藤道男は、能力が優れているのみならず作業療法の経験もあるので、第一病棟勤務を適当とする。

(6) 第一病棟の正看護人末木房子は能力、経験に富んでいるので、同人が新第二病棟主任平賀よ志子を補佐し同病棟において執務することによつて、第二病棟の看護能力の回復向上が期待できる。

(7) 第三病棟の赤池美代子は昭和三九年に准看護人の資格を取得したばかりであるから、夜勤のある第二病棟に配置換して経験を積ませるのを適当とし、第一病棟の補助看護人石井忠三は、多年同病棟に勤務し作業療法に習熟していないため、右療法の実施を主とする第三病棟への配置換えを適当とする。

以上のとおり病院が命じた本件配置転換は、前記1、3記載の業務上の必要に基づき、看護人らの身体的条件、適性、能力等を考慮し、適材を適所に配置するという観点からこれを立案、実施したものであつて、全く正当なものというべきである。

(三)  (本件拒否行動の違法性について)

1 病院は組合の団体交渉の申入を故なく拒否したのではない。

(1) 病院は右申入に対しあくまでこれに応ずる態度を固め、関昌能庶務主任をして昭和三九年一一月二一日から三日間組合と予備折衝を行わせ「団体交渉申入書中の『団体交渉が妥結しない場合の配置転換は認めず、従来の勤務体制を維持する意思を組合は表明』する旨の記載(以下付記事項という)は団体交渉を円滑にするうえからとりのぞいて欲しい。人事の説明は従業員個人の名誉に関することも多いので、第三者(組合の連絡機関にすぎない県労連オルグ)を交えた団体交渉の席上では通り一遍の説明しかできないのであるから、予備接衝の段階において右人事の理由の説明をした方が従業員にとつても、また将来の人事管理上病院にとつても望ましいことである」との申入をなしたところ、組合は付記事項をとりのぞくことおよび予備接衝の段階において人事の説明を受けることを拒否し、あくまで団体交渉の席上において右県労連のオルグを交えなければ右人事の理由の説明を受けないとの強硬態度を持し、また一一月二三日の夕刻今福オルグは、「自分は団体交渉に出席しないが、新配置を撤回または留保することを条件とせよ」との無理な要求を押しつけるなど、組合側において団体交渉を不能ならしめたのである。

(2) 団体交渉において組合側の交渉担当者をなにびととするかは、一応組合が自主的に決定することがらであるが、団体交渉事項その他いかんによつては、団体交渉を円滑かつ合理的に進めるため、使用者側から意見を述べて交渉担当者についての協定をなしうることはもとより当然である。現に病院と組合間には同年一一月二四日付で「年末手当」「看護婦補充」等の件に関し、部外者を交えないで団体交渉を行う旨の覚書が締結されているのであるから、まして従業員の適性等人格の機微にふれる場合は部外者を交えない方が円滑な団体交渉が期待できるものというべく、右覚書が締結されたことからして病院が、配置換えの団体交渉についても同様の合意が成立しうると考えたのはもつともなことである。

(3) また組合は、「病院が団体交渉に応じても配置換えについて合意に達しない限り新勤務拒否、旧勤務維持を行う」という態度を固持しているのであるから、違法な条件を付して団体交渉を強要するものというべく、その条件を撤回しなければ交渉に応じ難いとした病院の態度には何ら非難されるべき点はない。

2 本件拒否行動は、原告の企画、指揮の下に組合員が新配置、新勤務割に従つて就労することを拒否し(以下新勤務拒否という。)、旧勤務箇所で旧勤務時間に従つて就労したものであり(以下旧勤務維持という。)かかる行動はそもそも適法な争議行為の類型に該らず、これによつて病院の業務命令に違反し、病院の秩序を不当に紊したのみならず、後述の如く病院業務を著しく阻害し、かつ患者の治療に悪影響を及ぼしたものであり、明らかに違法な争議行為というべきである。

(1) 事実として行われる争議行為とは、ひろく「労働関係の当事者がその主張を貫徹することを目的として行う行為およびこれに対する行為であつて業務の正常な運営を阻害するもの」をいうのであるが(労調法七条)、そのうちでも違法性阻却事由となりもしくは法律によつて保護さるべきものは、つぎのごとき定型をそなえたものでなければならない。すなわち、

〈1〉 労働者の集団(とくに労働組合)としての「組織的意思」にもとづき

〈2〉 自己の「要求や主張を貫徹するという目的」のために

〈3〉 使用者に「団結による威圧」(主として経済的不利益を与えることによる威圧)を加えるため

〈4〉 「労働組合として一斉に」

〈5〉 「労務の提供を拒否し、もしくは不完全な労務を提供する」という消極的方法に訴えて

〈6〉 「業務の正常な運営を阻害する」

という要素をそなえるものであることを要する。

(2) しかるに、原告の行つた新勤務拒否、旧勤務維持は

〈1〉 病院が命じた配置換えが不当であるとして、これを拒否することを目的としてなされたものであること

〈2〉 それを指令したものは、配置換え等を命じられた組合員だけであることに徴すれば

(イ) 原告らが配置換えを拒否することによつて、業務命令に従うまいとする原告らの主張はその目的を達してしまうのであつて、新勤務拒否はそれ以上の意味すなわち「一定の目的を達するため使用者に威圧を加える」という意味をもつものではない

(ロ) 組合として労務の提供を一斉に拒否するという争議行為の核心的要素を欠く(いわゆる部分ストは、一部の組合員に労務の提供を拒否させることによつて組合員全部が一斉に労務の提供を拒否したことにちかい効果をおさめることをねらいとするものである)

といわなければならない。

したがつて、原告の行為は違法性阻却事由の定型たる争議行為とはいえないのであつて、原告が「新勤務拒否、旧勤務維持は争議行為とは考えていなかつた」と述べているのはこのことを裏づけるものである。

(3) のみならず、原告らの行つた新勤務拒否、旧勤務維持は、病院のなした業務命令を排除し、原告らが決定し指令するとおりの勤務態勢につかせようとするものである。これは、消極的に労務の提供を拒否するにとどまらず、病院がその権限と責任とにおいてなすべき業務運営に干渉し、それを原告らの望む方向に変更することを企図するもので、ことに従来の勤務態勢の維持を強行することは病院の業務管理を排除し、原告らの決定指示によつて業務管理を行うことに帰し、本来消極的な労務の集団的不提供(不完全な提供を含む)を内容とすべき争議行為の本質からみて、異質の要素を含み違法な行為というべく、かりにこれを争議行為と称するとしても違法なものであることにかわりはない。

3 原告らの行つた業務阻害の実態は、つぎのとおりである。

(1) 本件配転に伴い勤務時間を変更された組合員らは当該時間に勤務しないで旧勤務時間割によつて就労し、病院側の再三にわたる就労勧告にも応じなかつた結果、別表(四)のとおり勤務者の重複、欠員が生じた。

(2) ところで病院の勤務体制は、適正な診療看護を行うため職員の適性・能力等のほか正看護人、准看護人、補助者の比率、配置された職員のチーム・ワーク等を考慮にいれてこれを決定しているのであるから、配置換えに不満なものが新勤務につかなければそれだけでも勤務体制は混乱し、適正な診療・看護を行うことができなくなるのである。まして集団的に新勤務を拒否し旧勤務を維持するときは、その混乱は激しくなるというべきである。

はたして、原告らの行為のため病院における業務の指揮命令系統が混乱し(たとえば、原告が旧職場たる第三病棟に止り新たに第三病棟主任となつた大久保鶴雄に、主任事務の引継を行わないために生じた混乱などはその顕著な一例である)、治療看護の両面において十分に業務が遂行されえないこととなつた。すなわち前記期間内の治療行為は、患者の現在の病状を維持するに必要な最小限度に止めなければならなかつたが、それとても完全を期し難く、連続施用を怠ればその効果の著しく減殺されるインシユリン療法も、一時中止することを余儀なくされたものが数例ある。ことに作業療法は、新たに作業療法主任を命じられた原告が就労せず、作業指導の中心を欠くにいたつたため、平常ならば作業療法として室外作業に従事するはずの第三病棟収容患者四八名は、病棟内に留め置かれ専ら室内作業にのみ従事させられたので、気分転換ができず不満を訴える者が多く、作業療法として全く効果を挙げることができなかつた。

また看護の面においては患者の起床、就寝、洗面、排便等の指導、巡視などが不行届となつたのみならず、勤務者中配置転換命令に従う者とこれを拒否する者との間に醸成されたとげとげしい感情的対立は、患者に反映してその不安感を増大させたばかりでなく、新配置部署に就くべく説得する管理職とこれに従わない看護者との間に交わされる言辞の応酬が激越となると、これを見聞する患者は一様に興奮して廊下を右往左往し、肩が触れ合つたことを理由に口論に及ぶような状態で、心神の動揺不安定による不眠、妄想、離人症等の症状が明瞭に看取されるようになり、特に症状の甚しい患者に対しては電気療法を実施するのやむなきにいたつた。

この間原告は組合員らの前記行動を指揮推進したのみならず、非組合員の配置転換対象者平賀よ志子、石井忠三、赤池美代子その他の非組合員に対し、組合員の右行動に協力すべきことを説得する挙に出た。

このような業務阻害行為の違法性が強いことは多言を要しないところである。

(四)  (本件懲戒解雇の正当性について)

1 叙上のごとく原告は、その企画・決定・指導した配転拒否闘争によつて自ら病院の業務を阻害したのみならず、組合員をして病院の業務を阻害させたものであつて、これがため病院の指揮・命令の系統は混乱に陥り、正常な治療行為、作業療法、看護行為を行うことができず、とくに安静な環境と行き届いた看護を必要とする病院であるのに、それが害され患者に悪い影響を与えているのである。

本来この種の業務管理的実力行使は、その結果として損害や危害を発生せしめる抽象的危険がある限り当然懲戒解雇の事由となるものであるが、本件のごとく具体的に危害が発生している場合にはいつそうの責任が加重されるべきことは当然である。

加うるに、(イ)病院はその開設以来、精神衛生法第五条によつて都道府県知事から都道府県が設置する精神病院に代る施設として指定された精神病院であり、原告の指導した配転拒否闘争当時の全入院患者一六六名中、同法第二九条により都道府県知事が入院させたいわゆる措置入院者が約五〇名に及んでいたのであるが、この措置入院者は、二人以上の精神衛生鑑定医が一致して、医療および保護のため入院させなければ自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすおそれがあると診察したものであるから、病院において適切な措置を講ずるのでなければかような自傷他害の結果が発生する危険性が大きいこと。(ロ)右配転拒否闘争は一〇日のスト予告期間をおかなかつたため、病院には全くこれを予期し得ず無準備のまま対処しなければならなかつた結果、損害や危害を発生せしめる危険性は極めて高かつたというべく、現に右配転拒否闘争に際し病院側が払つた努力にも拘らず、三日間にもわたつて正常な治療行為、作業療法、看護行為を行うことができず、患者に悪影響を与えざるを得なかつたのである。

したがつて原告は、本件配転拒否闘争について懲戒解雇の責任を免れないというべきである。

2 原告は、一一月二六日午後から配転拒否闘争をやめ新配置につく旨病院長に申し出ているが、これによつて右の責任に消長をきたすべきものではない。しかもその際原告は「右配転拒否闘争は正常なものであるが、戦術を誤つたのでこの闘争をやめる」旨言明しているのであるから、右申出によつて原告の責任が宥恕さるべきものでもない。けだし一般に過去に行われた違法な行為についての責任が宥恕されるためには、その責任あるものが自己の行為を反省し行為の違法性を自覚して悔悟し、遺憾の意を表明して謝罪するとか、そのような行為を再び行わないことを誓うとかの態度に出なければならないのに、原告は右に述べたように、本件配転拒否闘争の違法性を自覚せずこれを正当視する態度をとつているからである。

なお、原告の懲戒解雇を決定した一一月二五日の理事会において、翌二六日の行動もみたうえで右処分をいい渡すことにしたことは事実であるが、二六日になつてからもすでに行われた配転拒否闘争についての原告の責任を宥恕すべき事情はなんら発生していない。もつとも原告は、前述のごとく二六日午後五時以降配転拒否闘争を中止することを通告してきているが、そのことによつてすでに行われた違法な配転拒否闘争についての原告の責任が宥恕さるべきものでないことは、前述のとおりである。してみれば一一月二六日に、病院が原告をとくに宥恕することなくして懲戒解雇したのは当然の措置である。

3 原告の行為を正当づける理由はない。

原告は、病院の行つた前記原告らの配置換えが組合の切崩しを意図した違法なものであるからこれを拒否したと主張する。しかしながら、病院の業務命令が違法であるからといつて、前記のごとき違法な業務阻害行為を行うことが許されるものではない。

一般に業務命令は、使用者がその責任において自由な裁量にもとづき発するものであるから、従業員は業務命令がきわめて違法で、しかもそれが明白なものでないかぎり業務命令に服従する義務がある(もし従業員がその独自の判断にもとづいて業務命令が不当であるとして、これに従うことを拒否するとしたならば、業務の運営が混乱に陥るおそれがあるからである)。

本件においても原告らが病院の業務命令に異議があるならば、相当な方法で苦情を申し立て、労使の交渉によつて平和裡に解決すべきものであるが、その解決にいたるまでは(労働協約等に労使が妥結にいたるまで業務命令に従わなくてもよい旨が協定されていない限り)、業務命令を遵守すべきものである。しかるに原告はこの理に従わず、独自の判断にもとづき前記のように業務阻害行為を行つたものであるから、これについての責任を免れえない。

(五)  (不当労働行為の主張に対する反論)

原告は、本件懲戒解雇は原告が組合の執行委員長として正当な組合活動を行つたことを嫌悪してなされた不当労働行為であるという。しかし不当労働行為が成立するためには、原告が執行委員長として活動していなかつたならば、たとえ本件配転拒否闘争を企画、決定、指導もしくは実行したとしても、懲戒解雇されなかつたであろうという関係が認められなければならない。

しかるに本件配転拒否闘争は、客観的にみて違法なものであり、懲戒解雇に値するものであることはすでに述べたとおりであり、なにびとがこの行為を企画、決定、指導もしくは実行したとしても、そのものが懲戒解雇さるべきは当然のことである。すなわち病院は、原告が組合の執行委員長であろうとなかろうと、また他に組合活動をしていようといまいとそれにかかわりなく、原告が本件配転拒否闘争を企画・決定・指導および実行したことだけを理由として懲戒解雇したものであるから、不当労働行為の成立する余地は全くない(かりに病院が組合活動を嫌悪しているという事実があつたとしても右のことに変りはない。けだし使用者に反組合的意思がいくらかでもあれば不当労働行為が成立するというのであれば、当然解雇に値するような行為をした労働者であつても、そのものがたまたま組合活動をしていたために解雇を免れられることになつて、不当にその労働者を保護する結果となり、さらには組合活動の名で不法な行為をすることを助成するという弊害を招くこととなるからである。不当労働行為の制度は、使用者の正当な人事権の行使を妨げるものではないこと当然である)。これを要するに病院が原告に対してなした本件懲戒解雇は、懲戒解雇に値する本件拒否行動を企画、決定、指導及び実行したことを理由になされた正当な人事権の行使であつて、これについて不当労働行為の成立する理由はない。

四  被告の主張に対する原告の認否

被告主張(二)2の収容状況、(二)3(4)のうち専任薬剤士をその主張の日に採用したこと、(四)1のうち病院がその主張のような指定をうけ約五〇名の措置入院者を収容していたことは認めるが、その余は不知または否認。

第三証拠〈省略〉

理由

第一  まず本件懲戒解雇の効力について判断する。

一  請求原因(一)、(二)の事実、ならびに被告病院が精神衛生法五条により山梨県知事から同県が設置する精神病院に代る施設として指定された病院であり、同法二九条により同知事が入院させた所謂措置入院者約五〇名を収容していたこと、原告の主張する日に本件組合が結成されたこと、昭和三九年一一月二〇日被告が本件配置転換及び新勤務割を発表し同月二四日午前九時からこれを実施するよう命令したこと、組合が同月二一日病院に対し原告主張のような記載のある団体交渉申入書を提出したこと、右団体交渉は結局開かれなかつたこと、同月二四日午前九時から本件拒否行動が行われたこと、本件拒否行動については(労調法七条の争議行為となるかどうかはさておき)労調法三七条一項の予告がなされていないこと、同月二六日午後二時ころ原告主張のような新勤務就労及び一二月一〇日以降のストライキ予定通告がなされたこと、その直後午後三時ころ被告が別表(二)の懲戒処分をしたこと、同日午後五時をもつて本件拒否行動が終了したことの各事実は、当事者間に争いがない。

二  成立に争いがない甲第一八号証の一、二、第二〇号証、乙第八ないし第一三号証、第一四号証の一、二、第三六ないし第三八号証、第四一ないし第四三号証、第四六号証、第五六号証、第五九号証の一、二、第六〇号証、証人斉藤道男の証言及び原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一ないし第四号証、第八、第九号証、証人中田正昭の証言及び原告本人尋問の結果によりみぎ中田正昭が作成したと認められる甲第一二号証の一ないし四、証人大久保鶴雄の証言及び原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一三号証、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一九号証の一、二、その形態及び被告代表者尋問の結果から真正に成立したものと推認しうる乙第二号証、証人中沢敦子の証言及び乙第四五号証により真正に成立したものと認められる乙第五ないし第七号証、証人大久保の証言及び甲第一三号証により真正に成立したと認められる乙第一六号証、被告代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと推認しうる乙第二〇ないし二二号証、証人中沢の証言及び乙第五号証により真正に成立したものと推認しうる乙第二四ないし第二七号証、第二九ないし第三三号証、第二八号証と第三三号証の各一、二、証人中沢の証言により真正に成立と認められる乙第四〇号証、証人斉藤道男、同今福庸夫、同島田愛子、同斉藤隅子、同中田正昭、同大久保鶴雄の各証言、証人中沢の証言(但し後記の措信しない部分を除く)、原告本人尋問の結果、被告代表者本人尋問の結果(但し後記の措信しない部分を除く)を総合すると、本件紛争について次のような事実を認めることができる。

(一)  本件配置転換発表に至るまでの経過。

1 被告病院においては従業員の採用は一部の例外を除いて新規学校卒業者のなかから行われるため、右採用とそれまで一ケ年間の退職者の補充とを基礎に、昭和三五年ころ以降例年主に春頃配置転換が行われて来た。

2 昭和三九年においても、五月三〇日に右のような趣旨の配置転換がなされ、本件配置転換で対象者となつた川崎松枝(第一病棟から第二病棟へ)、末木房子(第二病棟から第一病棟へ)、窪田きく江(第二病棟から第一病棟へ)は、本件配置転換と丁度逆の配置換えが実施された。

3 その後六月二〇日に第三病棟勤務の准看護婦山本美恵子が同日付をもつて、また七月二八日には第二病棟勤務の准看護婦秋山和子が一ケ月先をもつてそれぞれ退職を申出、更に八月中に第二病棟主任の正看護婦志村梅子が辞職を希望した(その後九月二日に、一〇月三日付をもつて退職する旨届け出た)。その他、第一病棟勤務の正看護婦窪田きく江が体調不調を訴えて八月下旬から長期欠勤するようになり、また第二病棟勤務の准看護婦島田愛子が、妊娠中で欠勤がちであつて業務遂行能力に減退を来たしていた。このように看護婦の欠員および欠勤者が出たため、病棟間の看護能力に不均衡が著しくなつた。

4 従前病院には専任の薬剤士がおらず、外部から週二日位薬剤師を招きその指示の下に、外来主任の正看護婦平賀よ志子が調剤の補助をしていたが、昭和三九年六月ころから専任の薬剤士を採用する方針が立てられると共に、外来患者が少くかつ病棟における有資格看護人が不足気味であつたことから、右平賀を病棟(同女の経験年数、職歴からいつて病棟主任)に充てる必要が生じた。但し同女が長期にわたつて外来担当であつたことから、同女を主任とした病棟には有能な看護婦をおいてその補助にあたらせる必要があつた。

5 ところで後述するように、昭和三九年七月の組合の結成以降組合から脱退者が相次ぎ、組合に対抗して病院との協調を路線とする互助会が結成されるなどの事態から、組合員と互助会員を中心とする非組合員との間に感情的対立が生じ、これらが精神病院においては特別に重視される看護人相互の協調、また看護人と患者との間の親密な結びつきを損いかねない状況となつたため、病院業務の遂行上看護人らの気分一新をはかる必要があつた。

6 以上3ないし5の事情から、病院としては昭和四〇年春先に行われるべき通例の配置換えを俟つことなく、昭和三九年一〇月初めと予定された薬剤士採用を目途に、主任クラスを中心とした配置転換を考えるに至つたが、その際、病院が開設以来重要視しておりまた全国的にも注目されるようになつた作業療法の整備強化のため、作業主任のポストについても併せて検討を加えることとした。

7 かくして病院長山角司は昭和三九年八月末ころ中沢敦子医師及び佐藤嘉男看護長に対し、それぞれ医局並びに看護責任者の立場から新配置案を立てるよう指示し、九月一九日の理事会の了承を得て右両者においてその作成が進められた。しかし右作成はなかなか進捗せず、一〇月一日の薬剤士採用を過ぎてもまだ具体化しなかつたところ、漸く一一月一九日右中沢・佐藤両名の意見を総合した別表(一)のような本件配置転換案が病院長に提出され、同日右案どおりに決裁を得て、翌二〇日本件配置転換の発表となつた。

8 これまで病院においては配置転換に際し、事前に対象者から意見を聴取したり或いはその了解を得ることは行われたことがなく、ただ対象者から上司を通じて不満が述べられる場合には病院として納得する限りこれを考慮するという慣行であつた。但し本件においては佐藤看護長が一一月一七日夜原告方を訪れ、「原告は副看護長もしくは作業主任、原告の妻島田愛子は第一病棟もしくは第三病棟勤務はどうか、」と両名の意向を聞き、両名がいずれにも反対である旨を知つた。

なお病院は本件配置転換については、既に組合或いは互助会が存在していることを考慮し、配置転換の必要性或いは個別的理由について従前と異なり初めて文書を作成して事後の釈明要求に備えることとした。

9 ところで本件配置転換の具体的内容は次のとおりであつた。即ち、精神病院における看護人の職務は、一般病院の看護婦と同様に治療の介助と患者に対する看護であるが、長期入院患者が大半を占めかつ病因が精神活動上の障害現象であるという特殊性からみて、初めて接する患者の症状の把握は容易ではなく、またそれ故に看護に際し患者から危害を加えられかねない危険を伴うので、勤務病棟の変更は単なる勤務場所の変更にとどまらず一時的にもせよ相当な労働量の増大を来たすものであるということができる。本件配置転換も原告を除く一〇名については一応右趣旨の負担の増大を伴うことが予期されたが、但し原告と大久保鶴雄、川崎松枝と末木房子の各交替、島田愛子の配置換え、斉藤道男、同隅子の新配置を除き、その他の者については業務遂行上の合理性に沿うことが明らかであり、かつ配置転換による労働条件の変更はまだ労働契約内容の変更として対象者らの同意が必要とされる程度には至つていない。しかしながら右七名の配置転換は、それにより得られる業務遂行上の利益が直ちにそれにより生ずる右趣旨の否定的効果より上まわるとは認めがたいものがあつた。即ち大久保と原告の交替についていえば、農林高校を卒業し、農耕、園芸、畜産等の作業に素養があり約二年間作業主任としての経験がある大久保に比し、右の分野については知識経験の乏しい原告が本件配置転換の段階において、作業療法主任として大久保以上に適任であつたかは明らかに疑問があつた。被告が高く評価する原告の優れた理解力、計画性、指導性、或いは作業療法に対する治療方法としての考え方や関心等の長所を生かして、病院の期待するような作業療法を実現するには、原告の資質がその評価どおりであつたにせよ、何よりも先ず原告に病院の理念に対し深い理解をもたせ、更に作業について一定期間必要な教育、指導を行うとともに、給与・夜勤・部下となるべき看護人の数などを配慮し、かつ、実際の職務内容等について病院では病棟主任よりむしろ格が低いと評価されている作業主任の地位を抜本的に改める等の諸措置を併せて実施しない限り、病院の作業療法に対する理念がその主張どおりであつたとしても、原告が作業主任になつたことにより所期の目的を直ちに実現することは困難であつた(実際に本件紛争後、右の措置が採られていることが窺われる)。むしろこの段階で大久保と交替することは、原告にとつては明らかに理由のない格下げであり、不馴れな勤務を強いられるとの印象を与えることになつた。

また川崎と末木の交替は、前記2の配置換えから半年しか経過していないのであるから、仮に配置転換の必要があるとしても両名にその必要性についての理解がないならば、両名の負担のみいたずらに増大するばかりで、意欲の喪失または組合員であることへのいやがらせではないかとの疑惑を招いて配置転換による効果が実現しがたい虞れがあるものであつた。

更に島田愛子については、妊娠七ケ月中に拘らず階段昇降の機会が多くなり、かつ患者から危害を加えられる虞れがより大きいと危惧される第三病棟(軽症の男子患者収容)に配置したこと、また斉藤夫婦については従来以上に家庭でのすれ違いが多くなる虞れがある配置であつて、明らかに旧勤務より不利益と思われる点があつた。

以上のとおり七名の配置転換にはそれぞれ勤務上の不利益または病院としても否定的効果が存していたのであるから、これらの点を充分補い、進んで病院が配置転換によつて得ようとした利益を実現するためには、被告病院としても然るべき措置・配慮をとる必要性が多分にあつたことは、本件配置転換の規模、また右七名の新配置が病院業務全体において重要な地位であることからも明らかであつた。しかしながら本件配置転換当時はまだ右のような措置、配慮はなされておらず、右七名が病院の真意を認識し了承しうる客観的状況は存在しなかつた(なお島田愛子については夜勤をさせなくて済むようにとの配慮から配置換えがなされたとの点は疑わしく、仮りにそうであつたとしても、右配慮が実際に本人または第三病棟関係者に告知された形跡はない)。

(二)  本件拒否行動に至る経過。

1 組合は昭和三九年七月の結成直後から事務長や看護長による激しい組合脱退工作、あるいは院長を始め管理職、互助会指導者らの組合に対する敵視、反発に遭遇し、結成後一ケ月も経たぬうちに脱退者二〇名以上を数えるという情勢下にあつて、本件配置転換の発表前ころは組合員は病院に対し強い不信と不満を抱いていた。

2 そして組合が被告病院に対してなした精勤手当の廃止、物価手当の支給または固定給の一〇〇〇円昇給、調理従業員の本採用、看護婦の増員等の諸要求についても、病院は僅か三回しか団交に応ぜず、実質的には殆ど交渉が進捗しなかつたため、組合は昭和三九年年末手当要求斗争に力点を置き、一一月一四日病院に対し基本給の三ケ月分を要求し、同月二一日に右回答と団体交渉を開くよう求めた。

これに対し病院は、右団体交渉には応ずるがその条件として組合側交渉委員から県労連オルグ二名を除外することを求め、同月二〇日右団体交渉を誠実に行い速やかに妥結に導く旨の合意に達したので、組合も右団体交渉に限り右オルグを除外することに同意した。またその席で同月二一日の団体交渉は、同日午後三時から山梨県私立病院事務長会議が年末手当に関する件を議題として行われる予定であつて、本件病院の事務長もこれに出席するので、同月二四日に延期する旨の合意がなされた。そして右合意の直後、本件配置転換が病院事務所の前に掲示する方法で発表された。

3 右1、2記載の様な経緯の後になされた本件配置転換に対し、組合は「一一名の対象者中七名が組合員であること、大久保を除く六名の組合員については労働条件の不利益変更であること、原告の新勤務場所が看護長や互助会会長横谷と同室の第三病棟二階の看護室となること等からみて、組合に対するいやがらせ以外の何物でもない」と認識し、一一月二〇日夜組合員は原告方に集つて右の点を討議し、更に翌二一日昼ころ総組合員一八名中一四名が集つて協議した結果「本件配置転換に反対しこれについて団体交渉の申入をする。病院がこれに応ぜずまたは交渉が妥結しない場合には従来の勤務体制を維持する」旨の方針を決定した。

4 右団体交渉申入に対し病院は右同日急拠理事会を開いた結果「団体交渉には応ずるが、人事権はあくまで病院にあり組合側に意見陳述権はないのであるから病院が説明をするにとどめ、交渉によつて本件配置転換を変更したり実施を保留したりしないこと、また県労連オルグの同席はさけるべく、できれば予備接衝において配置転換の理由の説明を済ませてしまうこと、団体交渉申入書の付記事項はそもそも組合に交渉権のない配置転換に関して開かれる団体交渉の趣旨に反するから予備接衝で削去するよう申出ること」を定めた。

5 かくして表面的には組合の申入どおりの日時に団体交渉を開くとの合意の下に、二一日夜、二二日(二回)、二三日午後三時ころの四回にわたり「県労連オルグの不参加、付記事項の削去」という病院側の申出をめぐつて予備折衝が行われたが、結局右申出につき合意に至らず病院は右申出が入れられぬ限り予定されていた団体交渉に応じられない旨の態度を明らかにするに至つた。なお右予備折衝では、病院からの申出に関する討議がなされたのみで、前記理事会の申合せによる本件配置転換の必要性、各個人の新配置の理由の説明は、何らなされていない。

6 原告、組合書記長斉藤道男及び県労連オルグ今福らは右団体交渉が開かれる予定であつた二三日午後五時ころ、再度渡辺事務長に対し会見を求め団体交渉の開催を要求したが、同事務長は前記の病院側の主張を固持したため、原告ら組合首脳部は右会見結果を待つていた団体交渉委員及び配置転換対象者ら約八名(その殆どが組合執行委員であつた。)に右結果を知らせ、翌二四日午前九時からは旧勤務体制を維持するとの方針を確認して散会した。

(三)  本件拒否行動による業務阻害状況について。

1 本件拒否行動は配置転換対象者を含め全組合員(但し大久保鶴雄を除く。)が新勤務を拒否し、旧勤務に就くという形態で行われた。ところで本件配置転換はその対象者一一名の勤務病棟の変更のみならず、全従業員の勤務時間の変更をも伴うものであつたので本件拒否行動により、新勤務体制を基準とした場合別表(四)の各B欄記載の欠員(即ち組合員の新勤務拒否)が生ずる結果となつたが、その反面同表各D欄記載の就労者(即ち組合員の旧勤務維持)があつたため、全体としては次の事実を除き就労人員に過不足は生じなかつた。

(1) 第一病棟

〈1〉 二四日の日勤(午前九時から午後五時まで)に予定された川崎松枝がこれを拒否し、欠員が生ずるところであつたが、本件配置転換を円滑に実施すべく病院が予め土肥悦子に出勤を命じていたため、結局右欠員を生じなかつた(もつとも右土肥は旧勤務によればこの日は日勤予定であつたから、組合員であつた同人が旧勤務を維持しても同様の結果となり、人員数のうえでは右調整策の存否は特に影響がない筈であつた)。

〈2〉 二五日の準夜勤(午後五時から翌日午前一時まで)は原告一名のみが予定されていたが、原告がこれを拒否したため誰も勤務するものが居らず、病院は病院の営繕職員(大工)赤池昭光をして最少限の看視だけを補わせた。

〈3〉 二六日の日勤(午前九時から午後五時)は予定された勤務者のうち組合員四名(中山歌子、渡辺弘三、川崎松枝、斉藤隅子)が勤務を拒否し、旧勤務を維持した組合員二名(土肥悦子、末木房子)を充てても更に二名欠員となつたので、病院は前記赤池とケースワーカーの横谷にこれを補充させた。

(2) 第三病棟

〈1〉 二五日午後の所謂C勤(午後五時から九時まで)予定二名のうち、組合員宮川隆(看護補助者)がこれを拒否したので、残る久保田勝義(同じく看護補助者)一名にて右勤務をせざるを得なかつた。

〈2〉 二六日午前の所謂C勤(午前五時から九時まで)についても右と同様の結果を生じた。

(3) 作業療法

原告が作業主任の勤務を拒否し、一方大久保鶴雄は旧勤務を維持するか本件配置転換に従うかその態度を容易に決しえず、二四日午前は一応患者を連れて外部作業(第二病棟前の浄化槽の清掃)を始めたが、佐藤看護長から新勤務に就くよう指示されると、右作業を中止して第三病棟主任として勤務しようとしたが、原告の確固たる態度をみてこれをいい出しかね、第三病棟と室外とをブラブラする状態であつた。みぎ大久保は二五日には翌日からの休暇を願出たが認められず、前日同様あいまいな行動に終始し、結局、作業主任は本件斗争中殆ど欠員の状態であつた。

それでも、二六日午前中は、准看護人斉藤道男が旧勤務(日勤)につき、やはり旧勤務についた宮川隆(補助看護人)、前記営繕職員の赤池とともに当日に計画されていたレクリエーシヨン療法(ソフトボール)のため患者を戸外に連れ出し、右療法を実施したが、後記4記載の事情から、中止が指示され、昼近くころ患者を病棟に戻した。

2 また本件拒否行動中旧勤務体制維持という手段について、組合及び組合員個人は、従前命ぜられていたと同じ内容の勤務を維持する意思を有していてそのとおり就労したのであつて、それを超えてことさらに職務をなげやりにするとか、旧勤務場所における職務上の命令を無視するなどの怠業的行為を敢行したものではなかつた。そして本件配置転換では勤務場所、勤務時間に関する変更の他、看護人又はその補助者としての職務内容自体が変更されたものではないから、前記1記載の人員過不足は病院側が適切な指示を与えるだけで容易に回避しうる事態であつた(ちなみに本件病院における患者の看護は、看護人ら従業員が医師や看護長らの特別の指示がなくとも、週間業務計画などで包括的に指示されているところに従つて滞りなく行つていたのであり、本件拒否行動中も右のような日常的な看護の遂行に特別の支障はなかつた)。

3 ところで労使紛争の経験に乏しく前記団体交渉申入書付記事項が実行されることはないと事態を軽視していた病院は、本件拒否行動に直面して客観的事態以上に病院に対する害意を感じるとともに如何に対処するか苦慮し、とりあえず院長、事務長、看護長らが個別的に右旧勤務を維持する組合員に対して、新勤務に従つて勤務するように説得したが、組合との団体交渉を開いて事態を収拾する方途は全然考慮しなかつた(本件拒否行動が開始された二四日の夕方、前記の経緯で延期された年末手当に関する団体交渉が開かれたが、病院はこの席上では本件拒否行動について何ら見解を示さなかつたのみならず、組合側から配置転換についても団体交渉を行うよう申出があつたのに対し、予定した議題ではないとしてこれを拒絶しているのであり、このことは本件拒否行動がもたらした業務阻害が少くとも二四日の昼間についてはさほど重大でなかつたこと、及び病院が組合との団体交渉による解決を考えていなかつたことを示す明白な証左である)。

4 こうして看護人の一部が新配置に従わないことを殆ど唯一の理由に病院は、旧勤務についた組合員には治療の介助をさせることができないとして、第一病棟で予定していた一名の患者に対するインシユリン療法を二四日、二五日の二日間にわたり中止し、また外部作業による作業療法及びレクリエーシヨン療法の介助も患者の逃走を防止しえない虞れがある(このような事態の徴候があつたかどうかは極めて疑わしい)として中止を命じた。

5 しかして二四日から二六日午後五時に至る本件拒否行動によつて、一部の患者に落着きを失ない或いは不安、妄想を訴える者があらわれる等ある程度の影響があつたことは否定できない。しかしながら被告病院においては春秋の従業員の慰安旅行や正月休暇の際は二日間前後作業療法やレクリエーシヨン療法等を行わないのが例であり、また雨天が続けば戸外作業を長期にわたり中断せざるをえないことは当然であるが、その都度患者の病状が悪化したとの事実も窺われないので、結局本件拒否行動のころの患者の動揺は、作業療法等の中止が原因というより、本件配置転換をめぐる労使間の対立が微妙に患者に反映したことによるものであつた。しかしながら患者の面前で労使間の論争や組合員、非組合員間のいがみ合いが行われたわけでなく、また少くとも三日間の本件拒否行動中には通常の労働争議に見られるようにデモ、ピケ、労働歌、ハチマキ、腕章、組合旗、スピーカー等が用いられたり、外部団体からの支援活動や、宣伝カーの使用等がなされたりしたことはなかつたので、入院患者らにもたらされた影響もさ程著しいものではなく、特段の治療や措置が必要となる程度に昂じたものではなかつた。

6 なお原告は二三日午後、本件配置転換に関する団体交渉が開かれない見通しになつたので、翌二四日からの本件拒否行動突入に備え非組合員の理解と協力を得るため、書記長の斉藤道夫とともに配置転換対象者となつた赤池美代子、石井忠三の両名に対し、また組合員渡辺弘三とともに同対象者平賀よ志子らに対し、組合の見解を説明して組合の斗争に対する協力を依頼し、更に原告単独にて院内電話により井上利子、中村恒子らに組合の方針を知らせ承知してくれるよう説明した。

(四)  本件懲戒解雇に至る経過。

1 組合員らは二四日昼休みに集会をもち、病院が本件配置転換に関する団体交渉に応じなかつたことを不当労働行為として地労委に救済申立をする方針を決め、二五日右申立書を地労委に提出したが、地労委内部で本件拒否行動が労調法三七条違反である旨の意見が出、これが同日夜地労委の労働者側委員を通じて原告らに伝えられたので、二六日昼休み組合員約一四名が集まり、本件拒否行動を一応中止し、同日午後五時から新勤務に就き、なお今後の病院側の態度如何では一二月一〇日以降ストライキに入る旨を決め、同日午後一時過ぎころ原告らがその旨を病院に通告した。

2 一方病院は二五日午前一〇時ころから参与会を開き、本件拒否行動に関する状況をまとめ理事会にこれを報告し、理事会ではこれに基づき午後三時ころまで協議の末、本件懲戒解雇を含む本件懲戒処分を決定し、同日夜「翌二六日にも斗争が継続されるならば翌二六日午後一時ころまでに右処分を行う」旨の方針が定められた。なお原告の懲戒解雇の理由は、本件配置転換の拒否及び本件拒否行動の指揮並びに本件拒否行動によつて生じた業務遂行上の困難と患者への悪影響にあるとされた。

3 右懲戒のための書類作成等に手間どつていた病院は、前記1のとおり組合からの通告を受けたため、直ちに右懲戒処分を実施することをきめ、本件懲戒解雇の意思表示を行つた。

以上の認定に反する乙第四四、第四五、第四七ないし第五四号証、証人中沢敦子の証言、被告代表者尋問の結果は、前記各証拠に照らし措信しがたく、他に右認定を左右すべき証拠は存しない。

三  当事者双方に争いがない前記一の事実及び前記二の認定事実を綜合して、当裁判所は本件懲戒解雇の効力につき次のように判断する。

(一)  本件配置転換は、大久保鶴雄を除く原告ら六名の組合員に関する限り、前記二(一)9において認定したように必ずしも合理的なものとは認め難く、かつ病院が対象者の納得を得るため然るべき措置をとらなかつたことは遺憾とせざるを得ない。しかしながら一般に配置転換は如何に適正に行われても対象者にある程度の負担をもたらすことは避け難いのであるから、その必要性が全く認められず、かつ対象者に不当に過酷な犠牲を強いるものであることが客観的にも明瞭である様な場合のほかは、職場組織にくみ込まれている労働者としては或る程度の不満がありまた不利益な点が予想されてもこれを受忍すべきものと解するのが相当である。これを本件についてみると本件配置転換は原告ら六名の組合員に対し、労働環境の点からしても組合活動の点からしても、右過酷の犠牲や不利益を強いる程偏頗なものとまでは評し難いのである(殊に島田愛子は一一月二七日以降新勤務についたが翌年二月無事出産を終えているのである)。従つて本件配置転換は直ちに原告らが組合員であることを理由とする不利益取扱いとは解されず、労働契約に基づく有効な業務指揮権の範囲内にとどまるものといわざるを得ない。

(二)  しかしながら他方、配置転換は労働条件の不利益変更を来す場合が稀ではなく、殊に本件にあつては配置転換の必要性ないし妥当性が必ずしも明らかでなく、組合員にとつて不信や疑惑を抱く余地がないとはいえない状況にあつたこと前述のとおりである以上、これを糺すため団体交渉を求めた組合の行為は適法であり、事を構えてこれを拒絶した病院の行為が不当労働行為を構成することは多言を要しない(労働組合法六条によれば組合は随意に第三者に対し団体交渉を委任することができるのであるから、病院が団体交渉の席から県労連のオルグを外すように固執したことは不当であり、また付記事項は、法により争議権を保証されている組合として当然のことを宣言したにすぎず、これを捉えて団体交渉を拒むことは許されることではない。そのほか本件証拠によつても病院の団体交渉拒否を正当化する事由は認めることができないのである)。

(三)  つぎに本件拒否行動は右団体交渉開催、及び本件配置転換の修正または実施の留保を求めて行われたものであるが、組合が配置転換につき団体交渉を求める権利を有すること及び本件配置転換を組合が不当と考えたことには相当の理由があること前述のとおりであるから、本件拒否行動は正当な目的を有する争議行為であると認めることができる。そして右行動は総組合員の八割近い組合員の意思に基づいて決定され、実際にも大久保鶴雄を除く殆ど全員がこれに従つて団体行動をした斗争であつたから、組合大会の議決という形式的手続こそ経ていないが、なお組合としての争議行為であるというに何ら妨げはないものというべきである(付言すれば、組合の意思決定は組合の自治に委ねられた問題であるから、争議行為開始を決定するにつき組合規約上手続違背があつたとしてもそのことは使用者に対する関係において争議行為の評価を左右するものとは解されない。また労働組合法五条二項八号によつて開始決定につき厳格な手続を要求されているのは「同盟罷業」のみであるが、本件拒否行動をとつた組合員はその期間旧勤務に服しその職責を遂行しているのであるから、本件拒否行動をもつてこれにあたると解しうるかについては甚だ疑問であるというべきである)。

なお被告は「本件拒否行動はそもそも争議行為の類型に入らない」と主張する。その当否は暫く措くとしても、労働組合法一条二項によつて正当化されるのは「労働組合の行為」であつて、必ずしも「争議行為」(同法八条参照)に限定すべき理由はないから、被告の右主張は当を得たものとはいえない。

(四)  そこで進んで争議行為としての手段の相当性について考えるに、本件配置転換前の労使関係、本件配置転換内容とその発表方法、前記団体交渉の申入及びこれに関する予備折衝の経過など前記認定事実を併せ考えると、いわゆるストライキ(一斉職場離脱)より軽度の手段とみられる本件拒否行動は(後述する労調法三七条に違反するとの点を除く。)前記目的を実現するため許容される限度を超えて病院に過大な犠牲を強いるものではないというべきである(ちなみに被告は「本件拒否行動は新勤務拒否に止まらず旧勤務維持を強行することによつて、ストライキ以上に病院の業務管理の排除をしたものであつて違法な争議行為である」と主張するが、組合員らは旧勤務場所にあつて何ら業務命令に反することなく従前どおりの職務に従事していたものであつて、この間新勤務に就労している者との間にさしたる軋轢を生じた形跡はないのみならず、病院は本件拒否行動を十分予期しうる情況であつたのに、組合員以外の労働者をもつて新勤務体制を遂行するような手配を全く怠つていたのであるから、仮に全組合員が旧勤務にも就くことをしなければより以上の業務阻害が生じたであろうことにも思いを至すと、被告の右主張はとうてい採用することができない)。

(五)  次に労調法三七条違反の存否及びこれが本件拒否行動の評価を左右するものか否か検討する。

本件病院が労調法八条一項四号にいう医療事業を行うものであることは疑いがなく、また前記二(三)1ないし5に認定した事実によると右拒否行動が軽度ではあれ労調法七条の「業務の正常な運営を阻害するもの」に該当することは否定すべくもないから、組合は労調法三七条一項、同法施行令一〇条の四第一項により、本件拒否行動をなす少くとも一〇日前までに地労委及び山梨県知事に対してその旨の通知をしなければならない義務があつたといわざるをえない。従つてかかる通知を経ずに実力行使に突入した組合の行為は労調法三七条違反の罪を構成するものである。

そこで同法違反の事実が争議行為の評価に如何なる関連を有するかについて考えると、公益事業における労働者といえどもその争議権自体が否定されるいわれはないのみならず、労調法三七条の予告義務が文言上労使双方の争議行為に対して課されていることからも明らかな様に、同条は労働者の争議行為から使用者を保護するための規定ではなく、公益事業が公衆の日常生活に欠くことのできないものであることに鑑み、予め争議行為のあるべきことを公衆に予期させて影響を最小限に止めると共に、強制調停など争議解決の機会を確保するための規定であると解されるから、右予告義務違反の争議行為といえども、使用者との関係においては直ちに違法と断定すべきものではなく、予告がなされなかつたことにより公衆に対し不当な損失を蒙らせ使用者に右損失填補の責任を余儀なくさせる等、特段の事情がある場合にのみ使用者との関係においても違法となるものというべきである。

そこで本件について右のような特段の事情が存したかどうかについて更に検討すると、本件病院が精神衛生法五条所定の指定病院として、本件紛争当時同法二九条により入院させられた所謂措置入院者約五〇名を収容していたことは当事者双方に争いがないところ、右措置入院者は自傷他害の危険性が極めて高度のものであり、しかもその人数が病院全収容数の三割に及ぶことに徴すると、本件拒否行動が所謂ストライキより軽度のものであつたとしても、その結果により右措置入院者の治療または看護に疎漏を生ぜしめ、ひいては他の入院患者らにも影響を生ぜしめる危険性が存在したことは、安易に看過されてはならないところというべきである。しかしながら同時に、本件紛争においては、組合結成後四ケ月間にわたり病院側の組合に対する行為には遺憾な点がいくつも認められること、本件拒否行動の直接の原因であつた配置転換の内容には不信および疑惑を抱かせる点が多分にあり、かつこれに対する団体交渉開催の要求に対し病院が前記認定のような不当労働行為を以て拒絶したこと、なお組合の団体交渉申入書付記事項は本件拒否行動の予告に外ならず、病院はその三日前には右組合員らが拒否行動に入る事態を容易に予期し得たのに漫然これを軽視して特別の準備をしなかつたこと、本件病院では外来患者が比較的少く広く本件拒否行動を公表(労調法施行令一〇条の四第四項参照)する必要性が必ずしも大きくなかつたこと、本件実力行使が現実に入院患者に及ぼした影響は幸いにして必ずしも大きくなく右入院患者ないしその保護義務者らから病院が責任を正式に問われたこともなく、またその程度の損失も生じていないこと等の諸般の事情に加えて、本件配置転換を是が非でも一一月二四日の時点で実施しなければならなかつたという緊急の事情を窺うに足りる証拠はないから病院としても無用の混乱を回避するためその実施を暫く留保する等の考慮があつて然るべきであること(医療が公益事業であればこそ、その遂行者である病院も労働争議を早期に解決するため譲るべきは譲ることがその社会的責任を全うする所以であつて、結果として組合を争議行為に追込んでおきながらそれによる混乱を挙げて組合の責任とすることは、責任転嫁のそしりを免れないというべきである)等を併せ考えると、組合の行為は全面的にこれを是認することはできないが、使用者に対する面の違法性はとり立てて論うまでのものではないと断定せざるを得ない。

四  そうだとすれば、原告が本件斗争を組合執行委員長として指導したことは、就業規則の「職場の秩序を乱し、正当な理由なく上司に反抗し、または命令を守らず、その情状が特に重いとき」には到底あたらないというべきである(また仮に組合の本件拒否行動に多少責めるべき点があつたとしても、そのことをもつて直ちに組合委員長である原告個人の全責任であるとして追求する根拠とすることは、許されないといわなければならない。けだし解雇の当否は専ら「従業員としての適格性の有無」に係つているのであるが、幹部責任の有無は直ちにこれとは結び付かないというべきであるし、幹部といえども団体としての組合の意思に規律されざるをえないからである)。従つて本件懲戒解雇は被告主張の就業規則にその根拠を求めることはできず、他にこれを首肯すべき事由につき主張立証のない本件では、何らの理由なくしてなされた無効のものと断ずる外はない(なお付言するに、証人大久保の証言により真正に成立したと認められる甲第一三号証によれば本件紛争当時山梨県内の精神科医師の間には「前の雇用者の承諾がない限り看護婦や看護人を採用しない」旨の不当な申合わせが存したことが認められるのであるから、本件懲戒解雇は、被告病院に七年以上も勤続しその間に漸く准看護人の資格を得た原告に再就職の機会を殆ど失なわせるという過酷な結果を強いることに帰し、企業秩序維持の観点から使用者に許容されている正当な懲戒権の範囲をはるかに逸脱しているものというべきである)。

よつて本件懲戒解雇が不当労働行為であるかどうかについて判断するまでもなく、原告は依然として被告の経営する病院の従業員としての地位を有するものと認めることができる。

第二  そこで、原告に支給されるべき賃金について判断する。

一  本件病院における賃金の支払いが毎月二五日締めの二八日払いであり、昭和三九年一一月当時原告の基本給が一万八〇〇〇円、職務給が一一〇〇円、通勤手当が二〇〇円であつたこと、原告の賃金は右の固定部分の他休日出勤手当、宿直手当、深夜手当、超勤手当等の非固定部分とからなつていたこと、原告の同年八月分の賃金が二万三七九二円、同九月分が二万四四〇九円であつたこと、昭和四〇年四月分以降右職務給が二〇〇〇円となり基本給が二七〇〇円昇給したこと、昭和四一年四月分以降は基本給が一七〇〇円昇給したこと、昭和三九年、四〇年の各年末一時金が少くとも基本給の二ケ月分、また四〇年、翌四一年の各夏期一時金が少くとも基本給の一ケ月分であつたことは当事者間に争いがない。

二  成立に争いがない甲第一〇、第二一号証によれば、本件請求にかかる一時金について次の事実を認めることができる。

1  昭和三九年年末分については、同年一二月一七日地労委職権斡旋により、一人平均基本給の二・二ケ月とし、そのうち〇・一ケ月分については病院が予め明確にする査定基準に従い各人の勤務成績を勘案支給する旨の合意がなされた。

2  翌四〇年夏期分については同年七月二七日団体交渉により、一人平均基本給の一・二ケ月分でそのうち一・一ケ月分は一律支給とし、残りは三〇%を出勤率、七〇%を前年年末時の査定基準によつて斟酌する成績査定分とする旨の合意がなされた。

3  同年年末分については一二月一五日団体交渉により、平均二・四ケ月分としそのうち二・二ケ月分を一律支給し、残る〇・二ケ月分のうち〇・一ケ月分は出勤率、他は病院への貢献度による査定分とする旨の合意が、他の条件付ながらなされた。

4  昭和四一年夏期分については同年七月三〇日平均一・三ケ月分とし、一ケ月分は一律に支給し〇・三ケ月分については総合的な評価基準に基づく査定分とする、との病院側提案を事実上組合が受諾した。

5  そして、組合員に対する実際支給状況は、昭和三九年年末分はほぼ二・二ケ月分、翌四〇年夏期分は一・一ケ月分強、同年年末分は二・三ケ月分前後、翌四一年夏期分は一・一ケ月程度であつた。そして右昭和三九年年末分以降の所謂成績査定分の支給について地労委は昭和四六年一二月一三日、組合員であることを理由とした不利益扱いがあるとの判断の下に、救済申立期間内にある部分につき、かつ従業員資格を有する者に限定して右不利益扱い分の支給を命じた。

右各認定事実によれば、原告に支給されるべき一時金はその主張どおりの割合であつたものと推認することができ、右推認を覆えすに足る証拠は存在しない。

三  右の他、原告の主張にかかる昭和三九年一〇月分の支給賃金額、昭和四〇年四月分以降の通勤手当昇給額を認めるに足る証拠は存しない。

以上によれば、原告に支給されるべき賃金は別表(五)のとおりであるというべきである。

なお原告は未払賃金につき、年六分の割合による遅延損害金を求めているが、本件病院は財団法人即ち非営利法人であるからこれに雇傭される者の賃金請求権を商事債権と解する由はなく、本件未払賃金については民法所定年五分の限度においてのみ認めることとする。

第三  結論

以上のとおり本件請求のうち原告の身分の確認、並びに未払賃金等金八六万六五七〇円及びこれに対する訴状送達の日(記録中の郵便送達報告書によれば昭和四二年四月二八日である。)の翌日以降完済に至るまで年五分の割合による金員、昭和四二年二月分以降、毎月二八日限り月額金二万九五〇〇円の金員の支払を求める部分は理由があるから正当としてこれを認容し、その余の請求は理由がなく失当であるからこれを棄却し、訴訟費用につき民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行宣言につき同法一九六条一、三項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 石丸俊彦 春日民雄 雛形要松)

(別表省略)

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